パーソナルトレーナーの広告表現と肩書きの書き方|景表法・栄養士法

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プロフィールに「栄養士レベルの知識で食事指導」と書いていないでしょうか。
あるいはホームページに「管理栄養士監修」と入れたまま、監修者の名前を書いていない、という状態になっていないでしょうか。

セッション中の言葉選びに気をつけている人でも、外に出している表示までは見直していないことがあります。
口頭と違って、書いたものは残ります。

この記事でわかること

  • 会話・販売・広告で規制の重さが変わる理由
  • 栄養士法に触れる肩書きと、触れない肩書き
  • 特定継続的役務提供をめぐるよくある誤解
  • そのまま使えるOK/NG対照表とレビュー依頼の文例

表示は言う場所で重さが変わる

表示は言う場所で重さが変わる

食事や効果の話には、複数の法律が重なってかかります。
適用の有無は、何について言ったかだけでなく、どこで言ったかで決まります。

まず全体像を置きます。

3つの法律のかかり方

法律 かかる場面 禁じられること
健康増進法第65条 食品として販売に供する物の広告・表示 健康保持増進効果について著しく事実に相違する表示、著しく人を誤認させる表示
景品表示法 サービス自体の表示を含む広告全般 優良誤認表示、有利誤認表示
薬機法 食品やサプリに医薬品的な効能効果を掲げたとき 未承認医薬品の広告とみなされるおそれ

健康増進法の対象は「食品として販売に供する物」で、セッション自体の効果表示は主に景品表示法の側で判断されます。
線引きの具体例は、消費者庁の誇大表示の禁止に関する解説と、健康増進法第65条第1項の適用に関するQ&Aにあります。

同じ発言でも場所でリスクが変わる

同じ一言でも、口に出す場所によってかかる法律の数が増えていきます。

  1. セッション中の会話で触れるだけ──主に医師法と薬機法の問題
  2. サプリや食品を販売・推奨する──健康増進法第65条と景品表示法が乗る
  3. 広告やSNSで発信する──さらにステマ規制が加わる

「このプロテインいいですよ」も、目の前の客に言うのか、店販で売りながら言うのか、投稿に書くのかで背負うものが違います。
言葉を選ぶ前に、今どの段階にいるかを確かめる。
この順番を習慣にするだけで事故の多くは防げます。

なお、症状や病名にどう答えるかは医師法の領域です。
そちらは食事指導はどこまで合法かの記事で条文から整理しています。

薬とサプリの話をどこで止めるか

薬とサプリの話

薬とサプリは、線が二重になる場所です。
会話で触れるだけなら医師法と薬機法の問題ですが、販売や推奨になった瞬間に健康増進法と景品表示法が乗ります。

先ほどの3段階が、そのまま効いてくる領域です。

服薬の話は入口で返す

場面 NG OK
服薬中と言われた 「その薬はやめて大丈夫」「減らしましょう」 「薬のことは主治医か薬剤師に確認してください」
副作用の話 「その薬は太るので変えてもらってください」 「気になる点は処方した先生に相談を」
プロテイン 「飲めば脂肪が落ちます」 「たんぱく質が不足しがちなので、食事で足りない分を補う選択肢です」
脂肪燃焼系サプリ 「これで代謝が上がって痩せます」 成分表示の範囲を超えて効果を述べない
鉄・ビタミン 「貧血に効きます」 「不足が気になるなら、まず血液検査を受けてみてください」
店販商品の案内 「便秘が治ります」「免疫力が上がります」 疾病の治療・予防を示す表現を使わない
機能性表示のない食品 「血糖値が下がります」 表示が認められていない効能を付けない

上2行が医師法、下5行が表示規制の領域です。
薬の話は入口で主治医か薬剤師に返す、と決めておけば迷いません。

店販を置いている時点で、会話ではなく「売る」段階に入っています。棚に商品がある状態で口にした一言は、販売時の説明として見られると考えてください。

食品に「治る」は使えない

食品に医薬品のような効能効果を掲げると、薬機法上の未承認医薬品の広告とみなされる可能性があります。
「治る」「効く」「予防する」は、食品に対しては使えない言葉です。

機能性表示食品や特定保健用食品であっても、届出・許可された範囲を超えた表現はできません。

「体重×○g」も言い方次第

たんぱく質量を体重あたりで示すこと自体は、広く使われている目安です。
問題になるのは、誰にでも一律に当てはめて言い切る場面になります。

腎機能に不安がある人には医師の確認を前提にする。
この一言の有無で、同じ数字の意味が変わります。

効果と見込みをどう説明するか

効果と見込みをどう説明

ここからはサービス自体の表示です。
根拠は主に景品表示法の優良誤認になります。

成約率を上げたい場面ほど、表現が強くなりやすいところです。

言い切りを条件付きに変える

場面 NG OK
減量の見込み 「2か月で必ず10kg落ちます」 「同じ条件の方で月に体重の数%程度が目安です。個人差があります」
保証の表現 「絶対痩せます」 達成条件と例外を明記したうえでの表現に留める
リバウンド 「もうリバウンドしません」 「維持期の通い方まで設計します」
ビフォーアフター 加工写真、条件の記載なし 期間・頻度・食事管理の有無を併記
体験談 「糖尿病が改善した方も」 疾患の改善を示唆する体験談は使わない
返金保証 条件を書かず「全額返金」 適用条件・期限・除外事項を明記
他店比較 「他より効果が出ます」 根拠のない優位性を主張しない

判断に迷う表現は、消費者庁の健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項についてに具体例が並んでいます。

ビフォーアフター写真のチェックリスト

実績写真は最も使われる素材で、最も条件が抜け落ちやすい素材でもあります。
掲載前にこの5つを確認してください。

  • 期間と頻度を併記しているか(「3か月・週2回」など)
  • 食事管理の有無を書いているか
  • 加工・補正をしていないか、撮影条件を揃えているか
  • 個人差がある旨を、本文と同じ見やすさで書いているか
  • 極端な成功例だけを並べていないか

最後の1つが抜けやすいところです。
平均的な経過も一緒に載せるほうが、結果として問い合わせの質が上がります。

エムのワンポイントアドバイス

これはトレーナー側ではなく、ジムを探していた側の感覚です。

ビフォーアフターが並んでいるページで最初に探したのは、数字ではなく「何か月で、週に何回通ったのか」でした。

そこが書かれていない写真は、すごいと思うより先に、自分に当てはめられないので飛ばしていました。

条件を書くのは法令対応のためだけではなく、読み手が自分の場合を想像できるようにするためでもあります。

肩書きとプロフィールの書き方

肩書きとプロフィールの書き方

ここは栄養士法第6条が直撃する部分です。
罰則は第8条の30万円以下の罰金になります。

制限されているのは名称だけ

栄養士法第6条第1項

栄養士でなければ、栄養士又はこれに類似する名称を用いて第一条第一項に規定する業務を行つてはならない

禁じられているのは名称の使用であって、食事のアドバイスという行為そのものではありません。
条文はe-Gov法令検索の栄養士法で確認できます。

場面 NG OK
自己紹介 「栄養士レベルの知識で指導」 「食事管理までサポートします」
肩書き・名刺 「栄養アドバイザー(栄養士)」 保有資格の正式名称のみ(NSCA-CPTなど)
ホームページ 実体のない「管理栄養士監修」 監修者がいる場合のみ氏名と資格を明記
民間資格・講座 修了を「資格」と表記、国家資格と混同させる 「○○講座修了」と正確に、発行団体名を併記

危ういのは名称そのものより、有資格者だと誤認させる組み合わせです。

「栄養のプロ」「栄養士並みの知識」といった枕詞を添えた瞬間に、類似する名称の使用と見られる余地が出ます。

「監修」と書く場合は、監修者の氏名と資格を必ず併記してください。実体のない監修表示は、栄養士法だけでなく景品表示法の優良誤認としても問題になりえます。

どの資格をどう書くかで迷う場合は、パーソナルトレーナーの資格の選び方で種類ごとに整理しています。

SNSとレビュー依頼で気をつけること

SNSとレビュー依頼で気をつけること

2023年10月から、いわゆるステマ規制が始まっています。
広告であるのにそうと分からない表示が、景品表示法の規制対象になりました。

個人で動いているトレーナーほど、無自覚に触れやすい領域です。

投稿とレビューのOK/NG

場面 NG OK
口コミ依頼 特典と引き換えに投稿を依頼し、その旨を伏せる 依頼した投稿には「PR」等を明示
インフルエンサー起用 広告であることを隠した投稿 「PR」「提供」を明示
成果投稿 「○か月で−15kg!」のみ 頻度・食事管理の有無・個人差を併記
医療的な示唆 「血圧が下がった」「薬が減った」 疾患や服薬には触れない

制度の内容は、消費者庁のステルスマーケティングに関するページで確認できます。

客に割引と引き換えでGoogleレビューを依頼する行為も、表示なしで行えば規制に触れるおそれがあります。
依頼すること自体が禁じられているわけではなく、伏せることが問題になります。

そのまま使えるレビュー依頼の文例

特典を付けずに依頼する場合

「もしよければ、率直なご感想をGoogleの口コミに書いていただけると嬉しいです。内容は正直なところで構いません」

割引などの特典と引き換えに依頼する場合

「口コミを投稿いただいた方に次回○円引きをご用意しています。投稿の際は『PR』と入れていただくようお願いしています」

特典を出すなら、PR表示をセットで依頼する。
この一手間だけで、規制の対象から外れます。

契約と解約の表示で誤解されていること

契約と解約の表示

最後に、広告や約款まわりで誤って書かれやすい点を1つ挙げます。
返金や解約の条件を書くときに関わってきます。

特定継続的役務提供には当たらない

「パーソナルジムは特定継続的役務提供に当たるので中途解約制度がかかる」という説明を見かけますが、これは正確ではありません。
特定継続的役務は、政令で次の7役務が限定列挙されています。

役務 期間の要件 金額の要件
エステティック 1か月超 5万円超
美容医療 1か月超 5万円超
語学教室 2か月超 5万円超
家庭教師 2か月超 5万円超
学習塾 2か月超 5万円超
パソコン教室 2か月超 5万円超
結婚相手紹介サービス 2か月超 5万円超

スポーツジムやパーソナルトレーニングは、この7つに入っていません。
一覧は消費者庁の特定商取引法ガイドで確認できます。

ただし、痩身を目的とした施術を併せて提供している場合は、エステティックとして該当する可能性があります。運動指導だけなのか、機器を用いた施術が入るのかで見方が変わるため、自店の提供内容で判断してください。

対象外であっても、解約条件を書かなくてよいという話ではありません。
消費者契約法の側からは、平均的な損害を超えるキャンセル料が無効になりうるという論点が残ります。

自店の解約条件をどう決めるかは、退会・解約の申し出への対応とパーソナルジムの契約で確認すべきことで扱っています。

広告表現に関するよくある質問

表示まわりで質問が多い5つを、短く答えます。

Q1. 「食事アドバイザー」と名乗るのは問題ありますか

A. 栄養士を想起させる書き方と組み合わせなければ、名称そのものが直ちに問題になるわけではありません。

危ういのは「栄養士レベル」「栄養のプロ」のように、有資格者と誤認させる表現を添えた場合です。

保有資格は正式名称だけを書き、民間資格なら発行団体名を併記してください。

Q2. 「効果には個人差があります」と書いておけば大丈夫ですか

A. その一文で打ち消せるとは限りません。本文の表示が強すぎる場合、小さく添えた注記では誤認が解消されないと判断されることがあります。

強い断定を注記で薄める発想ではなく、本文の側を事実に寄せるのが安全です。

Q3. 客が自主的に書いた口コミにもPR表示は必要ですか

A. 事業者が関与していない自発的な投稿は、規制の対象として想定されていません。

問題になるのは、依頼や特典の提供など事業者の関与がありながら、それを伏せている場合です。

関与したかどうかで線が引かれる、と理解しておくと判断しやすくなります。

Q4. プロテインを店販するときに言ってよいことは何ですか

A. 成分表示の範囲にとどめてください。たんぱく質を補う選択肢である、という説明までは問題ありません。

「脂肪が落ちる」「代謝が上がる」のように、健康保持増進効果を断定すると健康増進法第65条の問題になります。

Q5. 過去の投稿も遡って直すべきですか

A. 今も公開されている表示は、過去のものでも現在の表示として見られます。

ビフォーアフターと効果を断定した投稿から優先して、条件の併記か非公開かを判断してください。

まとめ

本記事の3つの結論

表示で問われるのは、嘘をついたかどうかだけではありません。
条件を書かなかったこと、関与を伏せたことも同じように見られます。

本記事の3つの結論

  1. 会話・販売・広告の3段階で、かかる法律の数が増える
  2. 栄養士法が禁じているのは名称であって、指導行為ではない
  3. パーソナルトレーニングは特定継続的役務提供には当たらない

明日変えられることは2つです。
プロフィールから有資格者を想起させる言葉を外すこと、そしてレビュー依頼に特典を付けているならPR表示をセットにすること。

どちらも書き換えるだけで終わります。

本記事は法令及び公的機関の公表資料をもとに、パーソナルトレーナーの実務に即して整理したものです。
弁護士による監修を受けたものではなく、個別のケースについて法的判断を示すものでもありません。
実際の運用で判断に迷う場面や、トラブルが生じた場合は、弁護士等の専門家にご相談ください。
また法令は改正されることがあります。
最新の条文はe-Gov法令検索でご確認ください。

参考資料

-法令・コンプライアンス